沼メモ

FF14(槍鯖)、その他ゲームやらなんやらの話題を書きたい。

読書感想文 「君の話」

三秋 縋 著 「君の話」を読んだ。

読書感想文などとタイトルに付けているが、これが感想文として適切なものになっているのかはなはだ疑問だ。

 

ブログの画面を開くたび、毎回「自分に文章を書く才がないな」と思わされる。この胸の中に渦巻くものを意味のある文章で表現することが全く困難に思われるからだ。とはいえ、これほどの巨大な感情を感じたならどこかに書き記しておくのも悪くないと思うし、これ以外に表現の出し方を知らないのでとりあえず書いてみる。

 

自分にとってクリティカルな物語を読んだ後は、余韻に浸ってしまい何も手につかないことがある。この本を読み終えたときも、深く深呼吸をして1時間くらい余韻に浸っていた。そしてこの胸に渦巻くものを言語化しようとするのだが、全くそれがかなわない。

 

なるほど、「感動して泣けてしまいました」やら「エモい」やらといった"言葉"は知っているが、どんな言葉を繰ろうとしても、言葉にした瞬間に陳腐なものに思えてきてしまい、言語化できない感情を持て余してしまった。

 

何なら、読む前と読んだ後の心拍数とか脳波とかフィジカルな指標を羅列した方が、まだこの感情を適切に表現できるのかもしれない。だからこのブログの内容を読んだとしても、あまり内容を信用するな。言語で伝達できるのは言語だけだ。感情を伝達することはできない。究極的な回答は「読めばわかる」だろう。

 

物語は近未来、偽物の記憶を自由に書き加える技術が発達した世界が舞台となる。

理想の青春時代、理想の恋人、理想の成功体験、どんな記憶も金さえ出せば買える(もちろん忘れることだってできる)。そんな世界で、虚ろで腐った男と不幸な女が人生の埋め合わせをするような物語だ。

 

私は出来損ないの人間だから、こういった話に弱いのだ。

 

そうでなくとも「あの時ああしていたなら…」とか「もっと自分がこうだったら…」なんてのは誰もがどこかで考えることと思う。もし現実に本書のような、疑似記憶を買えるような技術があったなら、俺は間違いなく理想の記憶を買っていただろう。それこそ主人公が与えられた―本人にとっては不本意だったが―記憶のような幼馴染の記憶を選ぶかもしれない。

だからこそ、後半のネタばらしパートを読み、クライマックスに向かうにつれ、このクソでか感情を抱える羽目になった。

 

とりあえずかけるのはこのくらいかな。個人的には心の神棚に収めるレベルの傑作でした。この作者さんの他の著作も買ってみようかな。

 

以下蛇足。

 

作者の三秋さんを知ったのが、卯月コウというVtuberの配信で名前が出てきたのがきっかけだった。本書に共感した人は卯月コウの配信も見てみると、面白いかもしれない。