沼メモ

FF14(槍鯖)、その他ゲームやらなんやらの話題を書きたい。

「家族を想うとき」感想

ネットサーフィンしていたら、こんな記事を見つけて、紹介されていた映画「家族を想うとき」を観に行った。

gendai.ismedia.jp

終わったときの感想としては、ひたすら陰鬱になるような映画だった。

 

最近ではジョーカーが陰鬱になる映画として挙げられていたりしたが、個人的にはジョーカーよりも陰鬱だった。ジョーカーは最後に主人公が「ジョーカーになる」という感情の出口のようながあったが、本作に出口はない。根本的な問題は解決されないし、主人公を苦しめたものがなくなることもない。


まずまず幸せだったであろう家族がばらばらになり、主人公自身もボロボロになっていく。そんな映画だった

 

特にこういった社会派映画?みたいなものをよく観るというわけではなかったが、主人公リッキーの個人事業主として運送を請け負うことになるという設定が気になった。

 

以前私は仕事の関係で、税金の滞納者と話をすることが多かった。税金の滞納者は色々な人がいたが、その中でも結構な割合でいたのが個人事業主として請負をしている人たちだった。大工のいわゆる一人親方や、本作でも描かれるトラックドライバーもいた。その人たちの状況を聞いてみると、保障とかがなかったり、トラックを用意するために借金したりとか、請負の悲哀みたいな話を聞くこともあった。

そんなわけで、イギリスだとどんな感じなのだろうとリッキーの境遇に興味がわいたのだ。

 

以下、結構ネタバレあるかも。

 

 ■幸せな家族の崩壊

本作の主人公一家は、家族としては比較的まともな部類の人たちのように思った。リッキーは家族を養うために身を粉にしながら1日14時間、週6日のドライバーの仕事を続けるし、妻はパートの介護職をしながら家族の問題にも辛抱強く向き合い、家族に対して声を荒げたりなどはほとんどしない。長男は反抗期で悪ガキながらも家族を想っている描写があるし、妹も父親の仕事を手伝ったり健気なものだ。

 

しかし、そんな家族もばらばらになっていく。
リッキーも妻も過酷な労働環境から余裕を失っていく。息子は悪ガキとつるみ、あげく不祥事を起こしてしまい、親子仲に亀裂ができる。

 

リッキーも何もしようとしなかったわけではない。少し仕事を休んで家族の問題に対処したいと元締めの人に話をしてはいた。しかし、休んだ場合は罰金が科せられてしまうため、やむなく仕事を続けていた。

 

 ■辛かろうが続けてしまう労働

車が壊れれば自分で直せ、休んだら罰金を科す、荷物が盗難にあえば自分で補償する、ケガをしようが病気で倒れようが何一つ関係ない。それがリッキーの就いた仕事だった。
それでもリッキーは働き続ける。働かないと借金を返せないから。家族が路頭に迷うから。休んでいたら罰金が増え続けるから。

 

もちろん1日14時間週6日の肉体労働を体を壊さず、ずっと続けられていれば、借金を完済し、マイホームを買い、家族と幸せに過ごすという世界線もあったのかもしれなかった。

だが、どれほどの人間がそのような世界線にたどり着けるのか? 実際どうなのかはわからないが、少なくとも俺では無理だろう。

 

冒頭にも書いたように、本作ではこの根本的な労働の問題は何一つとして解決せず幕を閉じる。終わった後は何か重いものをずっしり抱えたような気分になること請け合いだ。人におすすめできるような映画ではないが、心に残る映画ではあった。