沼メモ

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読書感想文「仏教思想のゼロポイント「悟り」とは何か」

『仏教思想のゼロポイント―「悟り」とは何か』(魚川 祐司 著)
 元々仏教とは関係なくツイッターで著者を偶然見つけてフォローしていた。「史上最強の哲学入門」から続く、東洋哲学や仏教への興味の中、初期仏教でどんなことが説かれた解説する本が出たということで、どんな感じかと前々から気になっており、今回読んでみた。

 

 本書で特に面白いと思ったのは、輪廻の説明に納得できたところ。
 今までは輪廻と言えば輪廻転生(生まれ変わり)のことをイメージして、宗教的な作り話か善行を積ませるための方便かと思っていたが、本書によればそうではないらしい。


 本書によれば、輪廻とは業によって、事物が日々刻刻と生起し続ける現象のことである。本書にならって蚕で例えるなら、幼虫が蛹となり蛾となる一連のプロセスが輪廻であり、魂が古い肉体から新しい肉体に移り変わるといった物語のことではない。いうなればこれを書いている今もその瞬間瞬間に我々は輪廻し続けている。
 これまで見聞きしてきた東方哲学の文脈から考えても妥当に思われる解説だったので、とても納得できた。

 

 輪廻を人間で考えてみる。人間は「精子卵子」が受精し、細胞分裂を繰り返して「胎児」となり、出産されれば「幼児」となり、「児童」、「青年」、「中年」、「高齢者」となりやがて死ぬ。火葬されれば体は「灰」となり、自然に帰る。このプロセスの中で行為(業)によって、「私」が生起し続けることを輪廻と呼ぶのだろうと解釈した。

 

 他にも、仏教的価値観を志向することが人間的な成長になるとか、一般的な世間での問題に対応できるようになるとかいう話にも否定的だったのが痛快だった。特に初期の仏教で目指されていたのは労働や生殖の否定であり、いうなれば“異性とは目も合わせないニートになる”ことであったというのはなるほどと感じた。これが現代社会での「人間として正しく生きる道」と考える人はそう多くはないだろう。

 この辺、親鸞は肉食妻帯していたはずだが、そことはどのような思想上の違いがあるのだろうか。その辺を次は確認してみようかと思っている。

 

 難易度については、正直事前知識ないと結構難しいなーと思った。史上最強の哲学入門から入っていたからどうにか流れをつかむことができたが、仏教用語とかも多く、一見して読みやすい本ではなかった。しかし、仏教の論理的なところの参考になったし、著者の別の本も読んでみたいと思う。